塗料の充填工程では、水性塗料と油性塗料の特性に合わせた適切な機械選びが重要です。ここではその違いと充填に適した機械について解説します。
塗料には主に水性塗料と油性塗料の2種類があり、乾燥時の成分の揮発方法が異なります。水分が蒸発するのが水性塗料で、有機溶剤が揮発するのが油性塗料です。
塗料の充填工程は、調合された塗料を缶などの容器に充填する過程を指します。しかし、塗料は充填時に液はね、飛び散り、液だれが起こりやすく、作業効率や歩留まりの低下につながってしまいます。これを防ぐためには、ノズル形状の工夫や充填条件の最適化が必要です。塗料の粘度や容器のサイズ・形状に合わせたノズル形状と構造、充填条件の事前テストを行うことが重要です。
自動充填機を使用する場合は、安定した搬送と確実な位置決めをしたうえで稼働させます。これらの仕様を満たした設備を導入することで、安定した充填が実現できるでしょう。
油性塗料の充填機は防爆構造が必須です。制御盤にはエアパージを行い、筐体内が陽圧であることを差圧計で監視します。モータや電磁弁などの電気機器は防爆仕様品を使用し、センサーにはバリアリレーを用いて対策を施します。必要な防爆レベルは地域によって異なるため、設備仕様の決定前に十分な打ち合わせを行いましょう。
水性塗料の充填機には防爆の制限がありません。液はねや液だれに配慮した標準仕様の充填機を選ぶと良いでしょう。
塗料の充填には直線間欠式ピストン充填機が適しています。液はねなどの対策として充填速度の調整が重要となるため、ピストンの駆動には速度設定や変速が自由にできるサーボモータ方式が良いでしょう。ノズルはショートノズルを使用しますが、十分な事前テストを行ったうえで形状を選ぶことが重要です。
サーボモータを採用することで、揺れの少ない搬送と高精度な位置決めが可能になります。また、多品種の容器に対応する場合、タッチパネルの使用できるタイプであればで搬送ピッチをデジタル設定・呼び出しして型替え時間を短縮できます。この組み合わせにより、生産性と歩留まりの高い生産ラインを構築できるのが利点です。
適切な塗料充填機を選ぶためには、塗料の特性や容器の仕様に合わせた機械の選定が重要となります。水性塗料か油性塗料どちらを充填したいのか。充填機を設置するスペースや環境についても確認したうえで選ぶようにしましょう。
メーカーも1社だけ見て決めるのではなく、複数から選んで信頼できるメーカーと相談するのがおすすめです。必要な要件を満たす機械を導入して、効率的で安定した生産を実現しましょう。
※各社公式HPの2021年9月時点での記載情報をもとに用途別に下記基準にて選定
工業用:危険物にも対応した防爆仕様で全自動・半自動充填機を取り扱う営業拠点数の最も多い会社(クボタ公式HP参照:https://scale.kubota.co.jp/fillingmachine/)
食品用:食品専門で外部の検査機関への菌検査依頼への対応を明記している会社(大阪屋公式HP参照:https://www.osaka-ya.com/quality/)
卓上用:小型充填機の導入実績5,000台以上を明記している会社(ナオミ公式HP参照:https://www.naomi.co.jp/strength/)