こちらでは、液体充填機を使用する際のHACCPの重要性を、わかりやすく解説しています。カビは、製品だけでなく充填機自体にもダメージを与えるため、発生しないようにするための対策について、理解を深めておくことが大切です。
宇宙食の安全性確保を目的に、アメリカで開発された食品に関する衛生管理方式のことを、HACCPといいます。「Hazard Analysis Critical Control Point」の略語で、日本語翻訳は「危害要因分析重要管理点」です。
食品の国際化が進むなか、多くの原材料や製品が国際的な規模で流通しています。そのため、従来の食品検査方式では、危害の防止という観点においては対応が困難になりつつあります。食の安全を確保するには、工程・加工・流通・消費の全プロセスを管理する必要があるのです。
液体製品の充填を行う工場においては、カビ問題にしっかりと対応できるよう環境を整えることは非常に重要です。微生物のひとつであるカビは、大きな影響力を持っており、深刻な問題を引き起こす原因にもなり得ます。
液体調味料の充填工場を例にとって考えてみましょう。工場内は湿度が高くなりやすく、かつ温度管理が簡単ではないため、カビが繁殖しやすい条件がそろっています。液体が直接触れる充填機などは常に湿気が存在するため、特に注意が必要です。
カビが発生した製品は、色や匂いが変化することがあります。いずれも消費者に不快感を与えるものであり、また製品イメージに大きな悪影響を及ぼします。ブランド全体に対する信頼が損なわれてしまう可能性もあります。
カビが混入した製品の摂取を原因とする、健康被害の危険性も大きいです。免疫力が低下している人やアレルギー体質の人などの場合は特に、健康被害が深刻化するリスクが高まるため、要注意です。
カビによって生成されるマイコトキシンは、腹痛や下痢、嘔吐といった食中毒の症状を引き起こします。そのような事態になれば、企業が法的責任を問われる可能性も、充分にあるでしょう。
製品の保存期間に影響することもあります。たとえば、液体調味料は、長期間保存されても問題がないように製造されている場合が多いです。けれども、カビが混入してしまうと、保存期間がかなり短くなるおそれがあります。そうなると、製品廃棄が増えるため、大きな経済的損失が生じます。
充填機の内部にカビの微細な胞子が侵入すると、さまざまなトラブルが起こるリスクが高まります。精密な機械部品で構成されているので、胞子や成長した菌糸で部品が覆われてしまうと、正常に作動しなくなる場合もあります。誤作動が起これば、充填の精度を維持するのは困難です。
充填機の潤滑部分にカビが入り込んでしまうと、動作不良や摩擦が起こりやすくなります。そして摩擦が増大すると、異音や過熱を引き起こすおそれもあります。グリースなどがカビに汚染されて、潤滑性能に影響するためです。そうなると当然、充填機の寿命も短くなってしまいます。
金属部品の腐食を早めてしまのも、カビの特徴です。カビの発生する際に放出される酸や化学物質などが金属表面に付着することがその原因です。ステンレス鋼などの金属が使用されている充填機が多いため、注意が必要です。
ここでは、工場内の黒カビ対策について解説していきます。
黒カビ発生リスクのある場所を特定します。充填機やキャップ締機、貯蔵タンク、配管などは、液体が接触する部分であるため、発生リスクが高いです。また、従業員の手や作業環境についても、しっかりと分析する必要があります。
重要管理点を定めることで、黒カビ発生を防ぎます。充填機は、定期的な清掃および消毒が求められる重要管理点のひとつです。湿度管理も重要管理点です。湿度が高くなりやすい部分には、除湿機や空調設備などの設置を検討しましょう。
設定した重要管理点を継続的に監視する方法を決めます。例えば、定められた頻度で清掃および消毒が実施されているかどうかを記録しておくことも、監視のひとつです。
監視の結果、重要管理点が基準から逸脱していると判断された場合には、是正措置を決めます。例えば、黒カビが発生したら、すぐに該当箇所をキレイにした上で黒カビ発生原因を特定し、再発防止につなげることが大切です。
HACCPシステムがしっかりと機能していることを検証するための方法を設定します。たとえば、定期的な内部検査を実施し、黒カビ発生状況や管理手順の適切性の評価を行うことも、検証方法のひとつです。また、必要に応じて、外部機関に検査を依頼することも検討してみてください。
監視活動・是正措置・検証活動のすべてについて詳しく記録し、保持しておきましょう。HACCPシステムの履行状況の確認だけでなく、問題が起こったときのトレーサビリティ確保も可能になります。
※各社公式HPの2021年9月時点での記載情報をもとに用途別に下記基準にて選定
工業用:危険物にも対応した防爆仕様で全自動・半自動充填機を取り扱う営業拠点数の最も多い会社(クボタ公式HP参照:https://scale.kubota.co.jp/fillingmachine/)
食品用:食品専門で外部の検査機関への菌検査依頼への対応を明記している会社(大阪屋公式HP参照:https://www.osaka-ya.com/quality/)
卓上用:小型充填機の導入実績5,000台以上を明記している会社(ナオミ公式HP参照:https://www.naomi.co.jp/strength/)