液体充填機は、液体や粘性のあるジェル、濃厚なクリームといったものをビンやボトル、缶といった容器へ自動的に充填してくれる機械です。全ての作業を自動で行ってくれる全自動充填機や、充填容器の搬送だけが自動で行われる半自動充填機など複数の種類があり、充填機によって対象となる充填物が異なることもポイントです。
化粧品や医薬品では正確かつ安全な取り扱いが求められるため、充填機を活用して品質管理を行うことにも意義があります。
化粧品や医薬品の分野で活躍している充填機には複数の種類があり、充填する対象物(充填物:バルク)も液体や粉体、粘体など色々とあります。
液体充填機では基本的に液体や粘性のある液状の物質などが充填物として選択されますが、実際にどこまでの粘性に対応できるかは充填機によっても異なるため注意してください。
一般的な充填物の例としては化粧水や乳液、美容液、スキンケア用品や医薬品のクリーム、ジェルなど様々なものが挙げられます。
充填作業をオートメーション化することで、常に安定した作業を遂行できるだけでなく、例えば24時間体制の稼働といったことも可能になります。
どれだけの時間にどれだけの作業を完了できるかシミュレーションを行いやすいため、スケジュール管理が容易になり、結果的に作業効率の向上や人件費の削減を目指せることもポイントです。
消費者の肌へ直接に触れたり、使用者が飲食したりすることもある化粧品や医薬品に関しては、異物混入や品質の異常といったリスクに関しても最大限に備えなければなりません。
充填作業を自動化することで、作業員が途中で製品に接する機会が減少し、髪の毛やゴミの混入、製品の汚損といったトラブルを防げることも重要です。
充填機はあらかじめ決めている量に合わせて、任意の容器に充填物を注入してくれる専用機械です。そのため、全ての製品について一定量の内容物を充填できるため、製品が少なかったり多かったりといった問題も発生しません。
また、追加充填や余剰分の除去といった修正作業も不要になり、作業を効率的に進められる環境が整います。
製造工程におけるリスクとして問題視されるのが、特定の作業員だけが必要な技術を持っているという工程の属人化です。一方、自動的に作業を進められる充填機を導入することで、マニュアルさえあれば誰であっても同じ作業を同じ手順で行えるようになり、作業員の急な離職や休職、人事異動といった状況にも速やかに対応できます。
シャンプーやリンスといった界面活性剤を含んだ充填物は、簡単に泡立ちが生じやすく、泡を発生させないまま容器へ正確に充填できるかどうかが重要になります。また、粘性のある乳液や化粧水の場合、充填後の糸引きによって容器が汚れる可能性もあるでしょう。
そのため、化粧品の特性や状態に合わせて、泡立ちを抑えられる機能が搭載されていたり、適切なノズルを有していたりと、条件ごとに細かく設定や調整を行えるかどうかは重要です。
マスカラやリキッドファンデーションといった高粘度の充填物に関しては、充填作業を行っている間に気泡が入り込んでしまうと、内容物がボトルからあふれて周囲を汚してしまう可能性があります。そのため、空気が混入しないよう速やかに充填できることが大切です。
また、特に油性の充填物は温度によって性質や粘性が変化することもあり、ノズルの温度管理といった面についても合わせて適正に設定できるものを選ぶことがポイントです。
その他、充填速度の制御に不備があれば色むらにつながる恐れもあるため、安定した充填を行えるように注意しましょう。
クリームやヘアワックスといった、特に粘性の高い充填物については、強力な押込機を搭載しており、十分かつ正確に充填作業を行える機械が必須です。
特にヘアワックスについては商品によって粘度が異なり、場合によっては固形に近づいてしまうこともあるため、油圧加圧などの押込機が求められます。
ただし、パワーの強い加圧装置は重量があって事故のリスクもあるため、作業員の安全管理を徹底することも同時に考えておかなければなりません。
液体充填機は、化粧品や美容関係の商品でも活躍しています。例えば、粘性の高いボディーソープでも、製造ラインでの移送や容器への充填のため、高機能は充填機が導入されているのです。
「株式会社ナカキン」の公式ウェブサイトでは、極めて粘度が高く、粒が入ったボディーソープを移送している充填機の事例が掲載されています。超粘度かつ固形物が混入しているボディーソープの充填では、充填機の大型化や摩擦腐食による機械のメンテナンス経費、さらには異物混入による摩耗など、課題もたくさん。
自社製のロータリーポンプを活用することで、粘度にかかわらずボディーソープを充填できるほか、異物の混入を防げたり、メンテナンスがより容易になったようです。
いろいろな種類のものが販売されている化粧品の製造現場では、製造現場で仕様されている充填機にも、様々な種類があります。また、流行に合わせて移り変わる化粧品のラインナップにあわせて、充填機もリメイクされている、といった特徴もあります。
化粧品の充填には、容器にあわせて専用の充填機が導入されています。これは生産ラインの生産性の向上はもちろん、特徴的なデザインの容器が多い化粧品ならではの特徴と言えるでしょう。
また、対象の商品が販売終了となった場合は、また新たな商品の充填に対応できるように、メーカーによって改良されることがあります。その際、これまでの作業フローの見直しやスペースのさらなる有効活用などもあわせて行われますので、充填機もあわせた生産体制そのものがリメイクされていく傾向にあるようです。
化粧品の販売には、ブランディング戦略としての狙いが置かれることもあります。それに伴い、導入される充填機にも、充填機能だけではないニーズがよせられるケースがあります。
充填機のメーカーである「三信精機」の事例では、都心エリアの路面店に開業した化粧品店が、PRの一貫として、製造現場まで店舗に設置したい、というニーズを持っていたようです。そのため、充填機の作業も可能なかぎりスペースをおさえて行う必要がありました。そこで導入された充填機は、クリーンベンチ内に収まる大きさに。また、ヒールシート機を収めることもできたため、セルの生産も可能な環境になっています。
化粧品分野では、このように、製造工程でもブランディングが行われることがあるため、導入される充填機にも様々な選択肢があるのです。
液体充填機も多く活躍している化粧品の製造現場では、充填機メーカーの技術が、その他の工程でも活かされている事例が多くあります。
例えば、口紅の成形作業。たくさんの液体充填機を手がけている「三信精機」では、化粧品会社から依頼を受け、これまであまり見られなかった新しいタイプの口紅の成形過程を担当。デザイナーとの打ち合わせから、成形に使う金型の試作、製品の仕上がりのチェック、また生産ラインの工程デザインなど、充填機の開発にも活かされている技術力を発揮しています。非常に難しい形状をした口紅を製造できるようになったことで、「どのように製造されたのか」業界でも話題になったようです。
もちろん、製造過程が複雑になったわけではなく、生産力を向上させたり、商品の拡大にも役立っているようです。
個性的な形状が多い化粧品の容器。充填作業を行う商品を変えるたびに、充填機の方でも煩さな部品の交換や切り替えが必要になってくるケースが珍しくありません。部品の切り替えを行うたびに製造現場が機械をセットしなおさなければならない、ということは、現場にとっては大きな手間ですよね。
このような化粧品の充填機における手間を軽減するため、「株式会社シバタエンジニアリング」が開発した充填機には、商品の切り替えにあわせて短時間で部品の切り替えができるタイプが登場。現場のセットアップから稼働までの時間を短縮できるだけでなく、エアチャックによるボトル輸送や位置決めが行えるため、化粧品を充填する容器のサイズが変わっても、部品の型替えの手間がほとんどないように設計されています。
化粧品の充填作業では、人の手がともなうことも珍しくありません。
例えば、ポンプキャップやストロー構造が付いたキャップなどの仮締め作業。人手不足が深刻な製造現場だからこそ、このような手作業はできるだけ自動化したい、というニーズがあがっています。
そこで「株式会社シバタエンジニアリング」が開発したのが、仮締め機能をそなえた充填機です。具体的には、人の手に代わって仮締めをおこなってくれるキャッパー機能がついており、作業の半自動化が実現。ポンプキャップやストローキャップを差し込む作業は人の手で行う必要がありますが、そこからの仮締めと本締めを機械で行えるようになっています。これにより、これまで2、3人で実施していた作業が、わずか1人で行えるようになりました。
こちらも化粧品の製造現場で、充填機を導入したことにより、人手不足の緩和につながった事例です。
化粧品の充填作業では、内容物を充填するまでに瓶を洗浄したり、充填後の容器の中栓打栓、またキャッピングまで行う必要があります。これらをすべて作業員が行っていたのでは、作業を効率的に実施することができません。
「株式会社シバタエンジニアリング」が提案し、導入につながったこの事例では、瓶洗いからキャッピングまでを1人のオペレーターの手で進めることができるようになり、しかも多品種少量生産でも対応可能に。充填に伴う作業全体を効率化することに成功しています。
小ロットかつアイテム数が多い化粧品の製造現場では、汎用性の高い充填機を導入することがポイントです。その事例のひとつが「ウイスト」にあります。
ウイストでは「充填機の交換部品をどれだけ使わずに稼働できるか」を考え、ボトルハンドリングに力を入れた開発を行っています。「充填機の交換部品が少ない」ということは、現場の作業員にも優しいということ。瞬発力が求められる注文があっても、充填機そのものに汎用性があるため、ずべてのラインで同じ商品の製造を行うことができる、という強みもあります。
また軽減できたコストは、検査機等の品質アップに回すこともできたとのことです。
こちらは「株式会社宣工社」が紹介している化粧品の充填作業。液体充填機を導入した製造ラインを見ることができます。
小さい容器に化粧品を充填している作業ですが、作業スタッフは清潔な作業着を身につけており、衛生管理をしっかりと実施している様子がうかがえます。充填機の動作もスピーディーで、生産性の高さがわかります。
こちらは「ヒロサワ機械」による化粧品の充填機の事例です。複雑な形状の容器に、粘性があるクリームの化粧品が充填されている様子を確認することができます。
こちらの充填機が画期的であるポイントは、容器の供給、反転洗浄、また追従充填といった複数の作業を、ひとつの充填機で実施することができる、ということ。それなりの広さの設置スペースを確保する必要がありますが、いちど稼働をはじめれば、スピーディーに充填作業をこなすことができます。
容器を移送しているバーの形状も特徴的。様々なサイズの化粧品容器に対応することができるため、汎用性の高い充填機であることがわかります。多品種小ロットで特徴的な容器が多い化粧品の充填には、このような汎用性の確保が求められていることがわかりますね。
※各社公式HPの2021年9月時点での記載情報をもとに用途別に下記基準にて選定
工業用:危険物にも対応した防爆仕様で全自動・半自動充填機を取り扱う営業拠点数の最も多い会社(クボタ公式HP参照:https://scale.kubota.co.jp/fillingmachine/)
食品用:食品専門で外部の検査機関への菌検査依頼への対応を明記している会社(大阪屋公式HP参照:https://www.osaka-ya.com/quality/)
卓上用:小型充填機の導入実績5,000台以上を明記している会社(ナオミ公式HP参照:https://www.naomi.co.jp/strength/)